2021 AUTUMN WINTER


MUVEIL MAGAZINE
vol.35
2021 AUTUMN WINTER
Precious Nostalgia


永遠のファンタジーアニメーションとその追憶から生まれた2021 AUTUMN WINTER COLLECTION。
vol.35 は、コレクションのテーマを紐解きながら制作秘話をお届けします。

『失われた時を求めて』
子どものころ夢中になったファンタジーの世界。クラシックなアニメーションで描かれる童話に惹き込まれて、登場人物に自身の重ね合わせながら何時間でも没頭した思い出をを多くの方がお持ちではないでしょうか。今回のコレクションは、その記憶を呼び起こすことを目的としました。
この記憶を呼びこすというのは、ある小説がインスピレーションとなっています。世界一長い小説としても知られる、『失われた時を求めて』です。フランスの作家マルセル・プルーストが半生をかけて執筆されたこの小説において、「紅茶とマドレーヌ」の挿し話がよく引用されます。
寒い冬の日に自宅へ帰った主人公。母が出してくれた熱い紅茶にマドレーヌを浸して口に含めた瞬間、「素晴らしい快感に襲われ、何か貴重な本質に満たされた」と感じます。最初は靄がかかっていたものの、やがて幼いころ叔母が紅茶かハーブティーに浸してくれたマドレーヌの味だったことに気づいたと同時に、生まれ育った町の思い出が「一気に、全面的に、生きた姿」で現れてきました。





Precious Nostalgia
嗅覚や味覚からそれに結び付く記憶や感情を呼び起こす現象は、「プルースト効果」と名付けられています。プルースト曰く、記憶には「意志的記憶」と「無意志的記憶」があり、「意志的記憶」とは想起することによってよみがえる記憶のことで、昨日のご飯の記憶だったり学生時代に覚えた世界史の年号だったりします。この記憶は、過去に属しており知性によってアクセスできるが現在と交わることはありません。一方「無意識的記憶」は、言わば突如むこうからやってくる記憶のことで、香りなどの感覚が引き金となります。この記憶の特徴は、「死んだ過去」ではなく、「生きた思い出」として立ち現れることです。現在の自身に生じた刺激をきっかけとなる、もう一度味わう記憶。
長くなってしまいましたが、MUVEILが目指したのは、袖を通した瞬間「Precious Nostalgia=とっておきの懐かしさ」を呼び覚ます衣服。
あのころの感動がよみがえることを願って紡いだコレクションに込められたエピソードをMUVEIL企画デザインチームに伺いました。


フラワーモチーフ刺繍シリーズ
ブランドにおいて欠かせないお花刺繍。今回は新しい試みとして安全ピンを採用しました。MUVEILらしいスパイスとして用いることを決めたもののなかなか手ごわかった安全ピン。キャッチーな色に均一に塗装する難しさや、ピンが開かないようにひとつひとつ糊付けして口をつぶすなど多くの工程を要しました。
安全ピンだけでなくラメ糸や毛糸を使用し、手刺繍でしか描き出せない季節の表情を表現しています。





リンゴ
童話のキーモチーフであるリンゴは、ボタンとプリントで取り入れました。
小さいころ出会っていた気がするリンゴボタンは実はオリジナルで作成。思わずたべたくなるようなぷっくりとした形をポイント。リンゴプリントは図案の段階から、モチーフの大きさに気を配りました。リンゴが大きいと子どもっぽい印象になってしまうし、小さすぎるとドットになってしまうのでそのギリギリのラインでデザインしています。





BAG
カゴバッグとエコバッグポーチで採用されたリスモチーフが思わず触れたくなるしっぽの素材にこだわりました。
サブバッグを持ち歩くことが多くなった今、上品なチャームのように仕上げて心躍るアクセサリーになればと思いデザインしています。




MUVEIL MAGAZINE vol.35はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。