2022 AUTUMN WINTER


MUVEIL MAGAZINE
vol.58
2022 AUTUMN WINTER
INTERVIEW AND MAKING OF
数多の想いを紡いで

MUVEIL MAGAZINE vol.58では、ともにコレクションを完成させてくださる工場さんにお話を伺います。

MOTIEF LACE

『GREY GARDENS』にてリトル・イディーが腰に巻いたレースカーテンからヒントを得たモチーフレースシリーズ。
太古の人が漁網としての技術から装飾用に発展していったとされるレース。フラワーバスケットとリボンのクラシックなモチーフを温かみのある表情の糸で表現するため、魚網の技術を起用しました。
中山も思い入れのあるシリーズを制作いただいた株式会社E-LIFEの武部さんに伺います。




E-LIFE Co.Ltd. INTERVIEW


会社の紹介をお願い致します。


オリジナルレースの制作だけでなく、エンブロイダリーレースやリバーレース、ラッセルレースなど全てのレースを、国内だけでなくヨーロッパやアジアで手配を行っています。レースに関する専門書やアンティークレースの資料のコレクションも多数所有しており、レース博物館への資料貸し出しも行っております。



オリジナルレースを作る際の工程を簡単で構いませんので教えてください。


ご依頼いただいたレースの図案や資料を確認した後、レースに使用する糸や生地を決めていきます。そのあとパンチングカードと呼ばれる編み機が情報を読み込むカードの制作に取り掛かります。カード式のオルゴールで使用するパンチカードをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。レースパンチャーにより図案を6倍に拡大するドラフトを行ってからパンチングカードを作成しますが、短いものでも約1週間、長いもので1ヶ月掛かるものもあります。パンチングカードの仕上がりと同時に試作スワッチが上がりますので、修正があれば修正を行い最終的に生産する流れになります。




今回お作りいただいた漁網レースはどのようなものですか。


イタリア・トスカーナ地方が起源とされています。漁村の奥さんたちの間で漁に使う網に手持ちの太糸で柄を手で編み込むのが流行しました。テーブルセンターやカーテンを作られていたようです。その土地名をとってタスカニーレース(トスカーナの英語読み)と呼ばれております。

その技術が中国の一部の地方に伝わり、私も依頼をうけて多くの手編み漁網レースを10年前まで中国で制作しておりました。現在中国ではレース手編み職人の激減により制作できなくなったので、 今回は刺繍レース機で再現することにしました。



手編みの漁網レースを機械で再現するにあたって一番重要なことは、設計図面であるパンチングカードの制作と糸の選別、そして生産工場です。
パンチングカードを制作してくれるパンチャーは38年以上私と一緒に仕事をしている技術者で、刺繍レースとその設計を熟知し的確なアドバイスをくれます。今回の漁網レースの制作についても力強い味方として動いてくれました。

特に漁網レースの特徴である四角い網目を綺麗に表現し、その上に柄が綺麗に編み込まれている様に表現するのは非常に難しいのですが、パンチャーのテクニックで美しく表現できました。


※注:モチーフレースを実際に制作されている様子

元々太糸を使用して編む予定でしたが、更にボリュームと柔らかさを出すためにこの糸を2 本引き揃えて1本の糸とするアイデアを工場が提案してくれています。水溶性不織布に刺繍してから、染色工場にて熱湯で水溶性不織布を溶解し残った刺繍部分をセット乾燥して仕上げるケミカルレースの技法も取り入れました。

このようにして、多くの技術者の様々な想いを込められたからこそ、今回の魚網レースを完成することができました。 ありがとうございました。





以前中山が伺った際アンティークレースの貴重な資料が多く感動したとのことですが、どのようにして集められましたか。


以前中山さんに観ていただいた資料の多くは長年少しずつ海外で購入したものや、すでに役目を終えたレース工場から貴重な資料として受け継いだものが大半です。また私が 38 年前にレース商社のレースデザイナーとして入社してから今日まで色んな繊維関係の会社様と企画生産してきた資料も、いまとなっては貴重な資料として観て頂けることをありがたく思っております。

DOT EMBROIDERY &
CROCHET STICH COLLAR SERIES


ヴィンテージのテーラードに使用されていそうなハンサムな表情のツイード生地に、ドット刺繍をあしらったシリーズ。刺繍と同色のかぎ編み衿とともに、ロマンティックな気分を盛り上げてくれます。 ひと手間もふた手間も添えて制作されたシリーズを担当くださった工場さんにインタビューしました。ドット刺繡生地を担当くださった渡辺矢株式会社、かぎ編み衿部分を制作されたTOKYO ANGLE株式会社にお話を伺います。





WATANABEYA Co.Ltd. INTERVIEW


会社の紹介をお願い致します。


テキスタイルの卸を専門とする商社です。



今回ご制作いただいたドット刺繍のかぎ針襟はコレクションでもポイントとなるパーツに仕上がりました。どのような過程で制作されましたか。


ベースのツイード生地と、刺繍の柄を何パターンかご提案し、実際の生地に刺繍した小さめの見本を作成しました。そこから確認作業に入り、サンプル用の刺繍生地を進行していきます。




難しかった点はございますか。


ツイード生地の提案が難しかったです。生地の質感・色目をかなり重視されており、10社以上のメーカーの資料から生地が決まった時はかなり安堵した記憶があります。また、刺繍糸の質感や、加工後の裏面の見え方にも指定があり、刺繍工場と何度か修正をして完成しました。



MUVEILの商品を制作いただいていますが、大切にしてくださっていることはございますか。


シーズンテーマによってご要望される生地が違うので、自分の中にブランドイメージのようなものを作らず、幅広く提案しています。また、先述の通り質感や色目も重視されるので、直接お話してご要望の内容を細かくお伺いするように心がけています。


TOKYO ANGLE Co.Ltd. INTERVIEW


会社の紹介をお願い致します。


ニットを中心としたメーカーです。 かぎ針編み・刺繍・加工などの手作業に積極的に取り組んでおります。



今回ご制作いただいたドット刺繍のかぎ針襟はコレクションでもポイントとなるパーツに仕上がりました。どのような過程で制作されましたか。


衿のベースとなる編地は工業用自動編み機でレース柄に編立を行い、ふち取りは手作業のかぎ針編みで仕上げております。




今回難しかった点はございますか。


布帛の衿パターンをもとにした形状をニットで編立てるのが難しかった点です。手作業の工程が細かく、工場へ正確に伝える事も試行錯誤しました。



MUVEILの商品を制作いただいていますが、大切にしてくださっていることはございますか。


手の込んだ可愛いアイテムが多いので、担当させていただくアイテムも手作業のあたたかみや細かな仕様の再現に注力しております。展示会ごとのイメージや取り入れられるモチーフ、毎回すてきなご依頼をいただけるが楽しみです。


ご協力いただきありがとうございました。 コレクションを制作するにあたって工場さんのアーカイブ資料はデザインチームにとって学ぶポイントが多い宝箱。既に制作が難しいものも新たな風を吹き込んで蘇るのも工場さんの熱意と知恵のおかげ。 想いを紡いだコレクションをお楽しみいただければ幸いです。

MAGAZINE vol.58はここまで。


2022 AUNTUMN WINTERのインスピレーション源となった『GREY GARDENS』についてMAGAZINE vol.57
デザイナー・中山にインタビューしましたので、併せてチェックしてみてくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2022.8