vol.95 2025 PREFALL WORKING PROGRESS

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MUVEIL MAGAZINE
vol.95
2025 PREFALL WORKING PROGRESS

伝統技法の温もり

コレクションのご予約特典となるノベルティですが、
PREFALL COLLECTIONでは季節のお便りとして、
いつも手ぬぐいをご用意しています。
依頼するのは、1872年創業の梨園染の製品を製造販売されている日本橋の戸田屋商店。
MUVEIL MAGAZINE vol.95では、手ぬぐいの制作方法をレポート。 実際に制作いただいている場面とともにご紹介します。

予約特典詳細はこちら


まずお邪魔したのは、日本橋の戸田商店。梨園染をメインブランドとして、伝統文化とその進化を152年守り続けています。



建物も戦前の住居とのこと。昭和初期の姿を伝える貴重な空間の中に梨園染めの商品が飾られています。

「梨園染めの特色として注染が挙げられます。染料を生地に注いで染める技法です。
表裏同じように染色出来て、染料のにじみや、混合によるぼかしを活かして豊かな深みのある多彩な染色ができます。」

教えてくださったのは、戸田屋商店の営業部長である岩城さん。

「注染は、反物を蛇腹状に折りたたみながら型紙で防染糊をひいてから、染料を上から注いで染め上げていきます。デザインが決定したらまず必要となるのは、型紙。少し前までは渋紙を使っていましたが、今はポリエステル混の丈夫な紙を使用しています。」



制作された型紙を確認して、MUVEILチームで色を決定していきます。 染め色サンプルを確認しながら、色の組み合わせを選んでいく作業です。



細かな修正など行いながら、染工場で制作していきます。
今回特別にその風景を見せてくださいました。



型紙の下に見えるのは、生地を傷めないように保護するための布で、「捨て生地」と呼ばれています。

「捨て生地と呼ばれていますが、洗って干して再利用していくので、擦り切れそうなくらい使うのでなかなか捨てないんですけどね(笑)」



柄や色が移染し幾重にも重ねられていく捨て生地が干された空間は、深い色合いが美しく見入ってしまいしまいます。

まず工場でご案内いただいたのは糊付けする板場と呼ばれる作業場。



「反物を蛇腹状に折りたたみながら、木枠に張った型紙で防染糊を何層にもひいていきます。染めない部分を1枚1枚保護していく作業です。糊は粘土や海藻などをベースとしたもの使用するのですが、柄によって石灰や水を配合し、糊の硬さを調整します。」




生地をシワなく伸ばしてスッと糊付けする作業は気持ちがいいほどスマートな手つきにうっとり。ちょっとしたズレが許されない作業には心地のいい緊張感が漂います。

「今回MUVEILが使用している生地は特岡という生地です。織りが細かいので、綺麗に染められて肌触りもいい。手拭い用の小幅生地を織る機械はもう生産されていないので一度壊れると修理も一苦労で、後継者がいなくて大変なんです。」

伝統技法を次世代に引き継ぐことは、人だけでなく工程の面でも厳しい現状を教えてくださいました。



糊をのせたらいよいよ染め上げる作業を紺屋(こうや)で行います。

「今回ベースが色生地となりますので、染める箇所を抜染してから染めていきます。抜き差しと呼ばれる技法です。抜染後は色の境目に土手を作り、色を差しがけていきます。」



作業場の近くには様々な染料やもくもくと湯気がでている場所も。



「染料は熱いものも冷たいものもあります。色も調合が変わるのでと奥が深いんですよ。」



「細い注ぎ口を持つ専用のやかんを使って染料を上から注ぎ込み、注がれた染料は生地の下からコンプレッサーによって吸引され、各層の生地の糸一本一本まで染め上げます。」




じゅわっと染め上がっていく中で、色によって職人さんの動きが変化しているのが見えます。 「減圧の仕方や速さで仕上がりが変わるのでここが職人の腕の見せ所でもあります。染めの職人の経験値はスピード感にも反映されます。人の手を使った流れ作業なのでそのリズムを止めないことも大切です。」




グラデーションの黄色のお花は、手作業だからこそ実現できる美しさ。
表が終わったら反物をひっくり返し、裏からも同様に染めていきます。裏も美しいのは注染の醍醐味。 日本の美意識がひしひしと伝わります。



染めが終わったら洗う作業。

「水洗機を使って、布地から防染糊や余分な染料を洗い落とします。顔料のインクを使わないことも関係しますが、プリントとちがって使えば使うほど柔らかくなり肌に馴染んでいくんですよ。」



洗った後は、ダテで生地を干していきます。風に優雅に舞う生地が心地よさそうです。

乾いたら生地をまた地巻きし、たたみ直してシワを取ります。その後ははさみで切って、検品しながらたたみ直して完成です。



多くの人の手を渡って作られる手ぬぐい。
人の温もりのように、それぞれ少しずつ表情も違います。
手染めならではの深みを楽しんでいただければ幸いです。

MUVEIL MAGAZINE vol.95はここまで。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2024.05